脊椎すべり症や脊椎分離症について説明します。
脊椎は、椎体、関節突起、椎弓、横突起、棘突起で構成されています。
全体としては、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の計24個で脊柱として存在します。
それぞれの椎骨は、椎間板や靭帯や椎間関節でつながっています。そのつながっている部分が離れてしまい、結果として骨と骨が離れて分離したり、すべってしまって椎骨の位置関係が崩れてしまったものを、分離症、すべり症と呼びます。
種類としては、
①分離症のみ
②分離すべり症
③変性すべり症
に分けられますので、それぞれを説明します。
分離症は、腰椎の椎間関節の関節突起が骨折をおこして、本体である椎骨から離れてしまうものです。
骨折の起こる原因は、スポーツなどにより、長年、腰や背骨に負担をかけつづけた結果
おこる疲労骨折によるものがほとんどです。若年期から熱心にスポーツに取り組んだような人に多くみられます。
分離症が起こっても、椎間板や靭帯の力で、正常な位置を保っている場合は、すべり症の併発ではなく、単に分離症と呼びます。
診断は、レントゲンやCTで後方から見たときに犬の首の部分のように見えるところが、骨折して分離して隙間が見えることで判断します。
発症部位は、ほとんどが腰椎の一番下の骨である、第5腰椎で起こります。中には、3番、4番腰椎で発症することもあります。
分離症では、分離していることで不安定になり、局所ではこすれるような力が加わり、炎症を起こすために、痛みが発生します。腰自体に痛みが現れることが多いです。
本来であれば、自然なS字カーブ(生理的湾曲)はあるものの、背骨は上下でまっすぐにつみ重なっています。
それが、前、または後ろに移動してズレるのがすべり症です。
背骨には自然な湾曲があるために、何かの原因で支えが弱くなると椎骨のすべりが生じます。
すべる方向はほとんどの場合、前方にすべります。
第4、5腰椎がすべりやすく、分離すべり症は分離症が第5腰椎に多いことから、第5腰椎のすべりが多くなります。
分離すべり症は、関節突起の骨折で、骨が分離した分離症が原因でおこったものです。
分離がおきると、分離がおきた下の椎骨とのつながりが椎間板だけになるため、前方(腹側)にすべっていきます。上体を後屈させると脊柱管が狭くなるため、神経を圧迫して症状がでやすくなります。
分離症になっても、必ず、すべり症になるわけではなくて、分離症の人の約20%が分離すべり症に移行するといわれています。
脊椎分離症がないのに、すべり症がおこるタイプです。
年齢が高くなって、背骨の組織が変性して弱ってくると起こりやすくなります。
加齢によって椎骨を支持している靭帯、椎間板、椎間関節などに緩みができて、椎骨を支えきれなくなって脊椎(背骨)がズレてすべり症になります。
中年以降、60才以降、60才以上の女性に多く、起こりやすいのは腰椎4番です。
慢性的な腰痛がおきやすくなります。重い物をもったり、長時間立ちつづけると、腰に鈍痛が出ます。
夜間の腰痛も特徴です。これは、寝ることで重力が縦方向にかからなくなると、すべった部分が余計に不安定になるためです。
特に寝返りの時に強く痛む場合があります。
すべり症が起きると、椎骨がズレることで、脊柱管が圧迫をうけて狭くなり、神経に刺激が加わります。
腰からは、下肢に向かう坐骨神経が出ているために、坐骨神経痛が出る場合が多く、下肢の痛み・痺れが発生します。
そのために、お尻、太もも、ふくらはぎ、足首と坐骨神経に沿った部分に痛みや痺れが起こります。
脊柱管狭窄症でおこる特徴的な症状ですが、すべり症でも脊柱管狭窄がおきるため、間歇性破行が現れます。
間歇性破行は5分程度続けて歩くと、脚が痛んだり、痺れたり、動かなくなったりして、座って休んでいると、また歩けるようになる症状です。
すべり症の場合、ほとんどが前方にすべるために、もともと軽い前弯(前に反る)をしている腰椎が、より前弯が強くなるように変形します。変形が起きると、症状はより悪化します。
すべり症は、脊髄神経、馬尾神経への圧迫刺激が強くなることが多いので、神経圧迫の最も進んだ時にみられる症状が膀胱直腸障害です。
膀胱直腸障害は、残尿感や、頻尿、便秘、下痢がおこります。